「まだ許せない」
海斗が屋上で呟いた。
空が隣に座った。「何をですか?」
「自分を。あの時の失敗を」
ミラと日和も加わった。
日和が優しく聞いた。「どんな失敗ですか?」
「半年前、友達を傷つけた。謝ったけど、自分が許せない」
ミラがノートに書いた。「自己批判」
空が観察した。「ずっと、自分を責めてるんですね」
海斗が頷いた。「あの時、もっと考えて行動すべきだった」
「後悔は自然です」日和が言った。「でも、いつまでも責め続けるのは?」
「罰?」海斗が答えた。「自分への」
空が静かに言った。「自己批判は、成長を妨げます」
「なぜ?」海斗が聞いた。
「責め続けることで、過去に囚われる。前に進めなくなる」
ミラが書いた。「許すことと忘れることは違う」
海斗が驚いた。「どういうこと?」
日和が説明した。「許すことは、過去を認めた上で、執着を手放すこと」
「忘れるわけじゃない」空が加えた。「学びは残す。でも、罪悪感は手放す」
海斗が考え込んだ。「でも、許したら、同じ過ちを繰り返すんじゃないか」
「逆です」空が言った。「許すことで、冷静に学べる」
ミラが例を書いた。「自己批判→防衛的。自己受容→学習的」
海斗が読んだ。「防衛的?」
「自分を責めすぎると、失敗から目を背けたくなる」日和が説明した。
空が続けた。「でも、自分を許すと、失敗を客観的に見られる」
「客観的に見て、何を学ぶか考えられる」日和が加えた。
海斗が深く息をした。「難しいな」
「最初は難しいです」空が認めた。
ミラが静かに言った。「私も、自分を許せなかった」
三人が驚いた。ミラが自分のことを話すのは珍しい。
「何を?」海斗が聞いた。
「過去の選択。でも、許すことを学んだ」
「どうやって?」
ミラが書いた。「過去の自分は、その時のベストを尽くした」
日和が理解した。「今の視点で過去を裁かない」
「そう」ミラが頷いた。「当時の自分には、今の知識がなかった」
空が説明した。「後知恵バイアスという概念があります。結果を知った後、それが予測可能だったと思い込む」
「だから、『あの時こうすべきだった』と責める」海斗が理解した。
「でも、当時のあなたは、今のあなたと違う」日和が言った。
ミラが書いた。「過去の自分を、友達のように扱う」
「友達のように?」海斗が聞いた。
「友達が失敗したら、責める?」空が聞いた。
「いや、励ます」
「なら、自分にも同じように」日和が言った。
海斗が目を閉じた。「過去の自分に、何て言えばいいんだろう」
「まず、『よくやった』」ミラが書いた。
「え?」
空が説明した。「完璧じゃなくても、当時のあなたは努力した」
日和が加えた。「そして、『学べたね』と言う。失敗から成長できたと認める」
海斗がゆっくり呟いた。「過去の自分、よくやった。そして、学べた」
涙が頬を伝った。
「いいですね」日和が優しく言った。
空が続けた。「自分を許すことは、弱さではありません」
「むしろ、強さ」ミラが書いた。
海斗が笑った。「不思議だ。許したら、軽くなった」
「罪悪感は重い荷物」空が言った。「下ろすと、楽になる」
日和が聞いた。「これから、どうしますか?」
「前に進む」海斗が答えた。「過去を抱えたままじゃなく、学びを持って」
ミラが微笑んだ。「良い答え」
空が静かに言った。「自分を許せるようになることは、自己成長の証です」
日和が加えた。「完璧な人間なんていません。みんな、失敗しながら学ぶ」
海斗が空を見上げた。「許すって、こんなに自由なんだ」
「自由です」空が頷いた。「過去から解放される自由」
四人は静かに座っていた。自分を許すことは、終わりではなく、新しい始まり。海斗は、ようやくそれを理解した。