「最近、ずっと気が重い」
海斗が屋上で呟いた。
日和が隣に座った。「何かあったんですか?」
「特に何もない。それが問題なのかも」海斗が空を見上げた。
空が静かに観察していた。「漠然とした重さですか?」
「そう。説明できないけど、心が重い」
日和が優しく言った。「それ、分かります」
「日和さんも?」海斗が驚いた。
「はい。特に理由がないのに、心が重い日があります」
空が説明した。「心理的な負荷は、必ずしも明確な原因があるわけではありません」
「じゃあ、どうすればいいんだろう」海斗が聞いた。
日和が考えた。「私は、小さなことに目を向けるようにしています」
「小さなこと?」
「例えば、今、風が気持ちいいとか」
海斗が風を感じた。「確かに...気持ちいい」
空が加えた。「マインドフルネスの考え方です。今この瞬間に意識を向ける」
「でも、それで心が軽くなるの?」海斗が疑問に思った。
日和が微笑んだ。「すぐには変わらないかもしれません。でも、一瞬だけでも軽くなる」
空が説明した。「心の重さは、過去や未来への思考から来ることが多い」
「後悔や不安」海斗が理解した。
「そう。でも、今この瞬間は、実は問題がないことが多い」
海斗が周りを見渡した。「確かに、今は平和だ」
日和が言った。「心が軽くなる瞬間は、探すものではなく、気づくものかもしれません」
「気づく?」
空が例を出した。「朝のコーヒーの香り、好きな音楽、友達の笑顔」
「日常にある小さな喜び」日和が加えた。
海斗が考えた。「でも、気が重いと、そういうのに気づけない」
「その通り」空が認めた。「だから、意識的に探す練習が必要です」
日和が提案した。「今日、心が少しでも軽くなった瞬間を、三つ見つけてみませんか?」
「三つ?」海斗が聞いた。
「三つだけでいいです。大きなことでなくていい」
空が補足した。「記録することで、気づく力が育ちます」
海斗がスマホのメモを開いた。「やってみる」
「一つ目は、もう見つけましたね」日和が微笑んだ。
「え?」
「今、風が気持ち良かったこと」
海斗が書き込んだ。「屋上の風」
空が静かに言った。「心が軽くなる瞬間は、特別なことである必要はありません」
「むしろ、日常の中にたくさんある」日和が加えた。
海斗が窓の外を見た。「でも、見逃してたんだ」
「みんな、見逃してます」空が言った。「だから、意識することが大切」
日和が聞いた。「海斗さん、今週楽しみなことはありますか?」
「楽しみ...」海斗が考えた。「金曜日に好きな番組がある」
「それも、心が軽くなる瞬間の予約です」日和が言った。
空が説明した。「未来への期待も、現在の重さを軽減します」
海斗が少し表情が明るくなった。「そういえば、今日の夕食も楽しみだ」
「良いですね」日和が微笑んだ。
空が加えた。「心の重さは、一度に消える必要はありません。少しずつ軽くなればいい」
海斗が深く息をした。「何か、肩の力が抜けた気がする」
「それも、心が軽くなる瞬間です」日和が指摘した。
「今、この瞬間」空が静かに言った。
三人は静かに座っていた。屋上の風、遠くの鳥の声、友達の存在。
海斗がメモに書いた。「二つ目:日和さんと空さんと話したこと」
日和が嬉しそうに言った。「ありがとうございます」
空が続けた。「人とのつながりも、心を軽くする大きな要素です」
海斗が聞いた。「でも、この軽さは続くのかな?」
「続かないかもしれません」空が正直に答えた。「でも、また見つければいい」
日和が加えた。「心が軽くなる瞬間は、無限にあります。気づくことを続ければ」
海斗が空を見上げた。「求めるんじゃなくて、気づく」
「その通り」空が頷いた。
日和が言った。「心が重い日もあっていい。でも、軽くなる瞬間も必ずある」
海斗がスマホを閉じた。「三つ目は、これから見つける」
「良い姿勢」空が認めた。
三人は屋上を後にした。心が完全に軽くなったわけじゃない。でも、少しだけ、空気が軽く感じた。それで十分だった。