「レオさんって、冷たいですよね」
誰かがそう言った。空は、それを聞いて考えた。
「本当にそうでしょうか?」
日和が小声で言った。「私は、そう思いません」
空が観察を続ける。レオは確かに、感情を表に出さない。距離を保つ。でも、冷たいのだろうか?
後日、図書館で、空はレオに聞いた。
「レオさん、あなたは冷たい人だと思われていますが」
レオが顔を上げた。「知っています」
「気にならないんですか?」
「気になります」レオが静かに答えた。「でも、どうすればいいかわかりません」
日和が加わった。「レオさんは、優しい人だと思います」
「優しい?」レオが驚いた。「どこが?」
「気づかれない優しさ」空が説明した。「愛着スタイルの違いかもしれません」
「愛着スタイル?」
空がノートを開いた。「人が他者と関わる際のパターンです」
「安定型、不安型、回避型、恐れ回避型」
日和が補足した。「レオさんは、回避型だと思います」
「回避型?」
「親密さを避け、自立を重視する」空が説明した。「でも、それは冷たさとは違います」
レオが黙って聞いている。
日和が例を出した。「先週、私が風邪で休んだ時、レオさんはノートを送ってくれました」
「直接渡すのではなく、郵便受けに」
空が頷いた。「私が困っていた時も、解決策だけをメッセージで送ってくれました」
「長々とした励ましではなく、具体的な方法」
レオが少し驚いた。「それは...普通のことでは?」
「普通ではありません」日和が言った。「それは、あなたなりの優しさです」
空が説明した。「回避型の人は、過度な親密さを避けます」
「でも、助けたい気持ちはある。だから、距離を保ちながら支援する」
「無関心に見えるのは、表現方法が違うだけ」
レオが静かに考えた。「私は、人と深く関わるのが苦手です」
「なぜ?」日和が優しく聞く。
「わかりません。昔から、そうでした」
空が提案した。「幼少期の経験が影響しているかもしれません」
「愛着スタイルは、親との関係で形成されます」
レオが少し思い出した。「親は、いつも忙しかった。私は、一人でいることが多かった」
「だから、自立を学んだ」日和が理解した。
「でも、寂しくなかったわけではない」空が付け加えた。「ただ、一人でいることに慣れた」
レオが頷いた。「今も、人と深く関わると、不安になります」
「それは自然な反応です」空が言った。「愛着スタイルは、簡単には変わりません」
日和が微笑んだ。「変える必要もないかもしれません」
「レオさんの優しさは、レオさんらしい形で表現されています」
空が補足した。「大切なのは、相手がそれを理解すること」
「そして、自分自身がそれを認めること」
レオが静かに言った。「でも、誤解されることが多い」
「誤解する人は、誤解するでしょう」日和が言った。「でも、理解する人もいます」
空が頷いた。「私たちは、理解しています」
レオが少し安心した表情を見せた。「ありがとう」
日和が最後に言った。「優しさには、様々な形があります」
「大声で励ますのも優しさ。静かに支えるのも優しさ」
空が付け加えた。「レオさんの優しさは、見えにくいかもしれません」
「でも、確かに存在します」
レオが小さく微笑んだ。「もう少し、表現を工夫してみます」
「でも、無理に変わる必要はありません」
日和が励ました。「あなたらしい優しさを、大切にしてください」
空と日和が立ち去った後、レオは考えた。無関心に見える優しさ。それも、一つの形なのだと。
窓の外で、静かに雪が降っていた。見えにくいけれど、確かにそこにある。優しさも、同じだ。