「また、SNSを見て落ち込んでる」
日和が空に声をかけた。図書館で、空はスマホを見つめていた。
「みんな、すごく充実してるように見えて」空が溜息をついた。
ミラが近づいてきて、ノートに書いた。「SNSは一部だけ」
レオが同意した。「誰も失敗や苦しみは投稿しない。成功だけを見せる」
「わかってるんです」空が言った。「でも、比べてしまう」
日和が優しく聞いた。「誰と比べていますか?」
「クラスメイト、友達、知らない人...誰とでも」
レオが説明した。「それは社会的比較理論だね。人は自己評価のために、他者と比較する本能がある」
「本能なんですか?」空が聞く。
「そう」レオが頷いた。「フェスティンガーという心理学者が提唱した。客観的な基準がないとき、人は他者との比較で自分を評価する」
ミラがメモを見せた。「上方比較 vs 下方比較」
空が読んだ。「上方比較?」
日和が説明した。「自分より優れた人と比べることです。それは動機づけになることもあれば、劣等感を生むこともあります」
「私の場合は、劣等感しか生まない」空が苦笑した。
レオが聞いた。「じゃあ、なぜ比べ続けるの?」
空が考えた。「...わからない。でも、やめられない」
「それは、比較が習慣化しているからです」日和が答えた。「特に現代社会では、情報過多で比較の機会が増えている」
ミラが書いた。「比較は苦しい」
「その通り」空が同意した。
レオが提案した。「比較の種類を変えてみたら?」
「どういうこと?」
「他者との比較ではなく、過去の自分との比較」レオが説明した。「一年前の自分と今の自分、どう成長した?」
空が少し考えた。「確かに...一年前よりは、いろいろできるようになってる」
日和が微笑んだ。「それが大切な視点です」
「でも、周りと比べて遅れてる気がする」空が言った。
「人それぞれペースが違います」日和が優しく言った。「マラソンと同じで、自分のリズムで走ればいい」
ミラがノートを見せた。「他人のゴールは、あなたのゴールじゃない」
空がハッとした。「そうか...私、他人のゴールに向かって走ろうとしてたのかも」
レオが付け加えた。「心理学では、これを準拠集団という。自分が参照する集団によって、幸福度が変わる」
「どういう意味ですか?」
「例えば、全国トップの学校にいれば、周りは天才ばかりで劣等感を持つかもしれない。でも、別の環境なら優秀と評価される」
空が理解した。「つまり、誰と比べるかで、自己評価が変わる」
「その通り」レオが頷いた。
日和が聞いた。「空さんは、本当は何を大切にしたいですか?」
「え?」
「他人の評価ではなく、自分自身が何を価値あると思うか」
空が考え込んだ。「...人を理解すること。心の動きを知ること」
ミラが微笑んだ。そして書いた。「それは既にやってる」
「そうですね」日和が認めた。「空さんは、いつも周りを観察して、理解しようとしている」
空が少し嬉しそうにした。「でも、それって特別なことじゃない」
「誰かと比べて特別かどうかじゃなくて、空さんにとって大切かどうかです」日和が言った。
レオが付け加えた。「比較は情報としては有用。でも、自己価値の基準にしてはいけない」
空がノートに書き留めた。「比較=情報。価値≠比較」
ミラが新しいメモを見せた。「あなたはあなた。それだけで十分」
空がじっと見つめた。そして、ゆっくりと頷いた。
日和が提案した。「SNSを見る時間を減らして、自分の成長日記をつけてみませんか?」
「成長日記?」
「毎日、小さなことでもいいから、できたことを記録する。他者との比較ではなく、自分の進歩を見る」
空が考えた。「やってみます」
レオが微笑んだ。「完璧な人間なんていない。みんな、見せている部分と隠している部分がある」
「わかりました」空が深呼吸した。「自分のペースで、自分の道を歩く」
ミラが頷いた。四人は静かに座っていた。他人と比べることは止められないかもしれない。でも、その比較に支配されない自分を作ることはできる。今日、そのことを学んだ。