「ミラさん、手が震えてますね」
日和が気づいた。教室で、ミラはプレゼンの順番を待っている。
ミラがノートに書いた。「不安」
空が近くに座った。「何が不安ですか?」
ミラが書き連ねた。「失敗したら、みんなに笑われる、評価が下がる、友達に嫌われる...」
レオが読んで言った。「それは、破局的思考だね」
「破局的思考?」ミラが書いた。
空が説明した。「一つの出来事を、最悪の結末まで想像してしまう思考パターンです」
日和が優しく聞いた。「実際に、プレゼンで失敗したら、本当にそうなりますか?」
ミラが考えた。そして書いた。「...たぶん、ならない」
「でも、不安は止まらない?」
ミラが頷いた。
レオが説明した。「不安は、未来の脅威に対する自然な反応だ。サバイバルのための本能」
「でも、プレゼンは命の危険じゃない」空が付け加えた。「脳が、社会的脅威を物理的脅威と同じように処理してしまう」
ミラが興味を示した。
日和が続けた。「不安症の人は、この警報システムが過敏になっている状態です」
「治せる?」ミラが書いた。
空が答えた。「完全に消すことは難しいですが、コントロールする方法はあります」
レオが提案した。「認知行動療法という方法がある。不安を生む思考パターンを変える」
ミラが聞きたそうにしていた。
空が実践的に教えた。「まず、不安な思考を捕まえる。『みんなに笑われる』という考えに気づく」
日和が続けた。「次に、その思考の証拠を探す。本当にそうなる証拠はありますか?」
ミラが考えた。そして書いた。「過去に、そうなったことはない」
「では、反証です」空が頷いた。「今回だけ特別にそうなる理由は?」
ミラが首を横に振った。
レオが説明した。「これが、認知の再構成。非合理的な思考を、合理的な思考に置き換える」
「でも、それでも不安は消えない」ミラが書いた。
日和が同意した。「その通り。不安は完全には消えません。でも、付き合い方を変えられます」
空が別の方法を教えた。「マインドフルネスという技法もあります。不安を観察するだけで、戦わない」
「戦わない?」ミラが書いた。
「不安を敵だと思わず、ただの感覚として観察する」レオが説明した。「『今、不安を感じている』と認識するだけ」
日和が付け加えた。「不安と自分を同一視しない。『私は不安だ』ではなく、『私は不安を感じている』」
ミラが書いた。「違いがわからない」
空が説明した。「前者は、自分全体が不安。後者は、不安は一時的な感覚の一部」
ミラが少し理解した表情をした。
レオが聞いた。「今、深呼吸してみて。ゆっくり」
ミラが従った。深く息を吸って、ゆっくり吐く。
「どう?」日和が聞く。
ミラが書いた。「少し、落ち着いた」
「呼吸は、自律神経に直接働きかけます」空が説明した。「副交感神経を活性化して、リラックスさせる」
レオが続けた。「不安の時、呼吸は浅く速くなる。意図的にゆっくり呼吸することで、体に『大丈夫』と伝える」
ミラが興味深そうにしていた。
日和が提案した。「プレゼン前に、三回深呼吸してみませんか?」
ミラが頷いた。
空が付け加えた。「完璧を目指さなくていい。不安があっても、やり遂げられる」
レオが励ました。「不安は敵じゃない。ただ、あなたが大切に思っていることのサインだ」
「大切なこと?」ミラが書いた。
「そう。どうでもいいことには、不安を感じない」日和が説明した。「不安は、あなたがうまくやりたいと思っているから」
ミラがハッとした表情をした。
空が微笑んだ。「不安を持ったまま、前に進んでいい」
プレゼンの順番が来た。ミラは深呼吸をして、立ち上がった。手は少し震えているが、歩き出す。
後で、ミラがノートに書いた。「できた。不安はあったけど、やれた」
日和が微笑んだ。「素晴らしいです」
レオが付け加えた。「それが、勇気だよ」
空が静かに見守った。不安は消えないかもしれない。でも、不安と共に生きることはできる。今日、ミラはそれを証明した。