ミラが図書館の隅で、スマホを見つめていた。表情は暗い。
「ミラさん」空が声をかけた。「どうしたんですか?」
ミラは何も言わず、画面を見せた。SNSの投稿に、否定的なコメントがついていた。
日和が隣に座った。「気にしすぎないで」
「でも」ミラが小さく言った。「間違ってるのかな、私」
空が静かに聞いた。「どう間違ってると思うんですか?」
「この人が言うように、私の考えは浅はかで、自己中心的で...」
日和が優しく遮った。「ミラさんは、他人の評価に敏感すぎる」
「敏感?」
「他者評価依存」空が説明した。「自己価値を、他人の評価で決めてしまうこと」
ミラが頷いた。「確かに、そうかも」
日和が聞いた。「ミラさん自身は、その投稿について、どう思ってた?」
「書いた時は、良いと思ってた。でも、このコメントを見て...」
「評価が変わった?」空が聞いた。
「うん。自分の判断が信じられなくなった」
空が考えた。「それは、自己評価よりも他者評価を優先しているからです」
「自己評価?」
「自分で自分をどう見るか」日和が説明した。「他者評価は、他人からどう見られるか」
「心理学では、健全な自己価値は内的基準に基づくべきとされています」空が続けた。
「内的基準?」
「自分の価値観や信念」日和が答えた。「外的評価だけに頼ると、不安定になる」
ミラが聞いた。「でも、他人の意見も大事じゃないですか?」
「もちろん」空が認めた。「でも、バランスが重要です」
日和が補足した。「他者からのフィードバックは参考にする。でも、それで自己価値が揺らぐべきではない」
「難しい」ミラが呟いた。
空が聞いた。「なぜ、他人の評価がそんなに気になるんでしょう?」
ミラが考え込んだ。「承認されたいから、かな」
「承認欲求」日和が頷いた。「人間の基本的な欲求の一つ」
「でも、承認欲求が強すぎると、問題が起きます」空が言った。
「どんな問題?」
「自分を偽ること。他人に好かれるために、本当の自分を隠す」
ミラが静かに言った。「それ、やってるかも」
日和が優しく聞いた。「どうして、そこまで承認を求めるの?」
「自信がないから」ミラが正直に答えた。「自分の価値が分からない」
「自己肯定感の低さ」空が診断した。「他者の評価で自分を確認しようとしている」
日和が言った。「でも、それは逆効果なの」
「逆効果?」
「外的評価に頼るほど、自己肯定感は下がる。なぜなら、コントロールできないから」
空が補足した。「他人の評価は変わりやすい。それに依存すると、常に不安定」
ミラが深く息を吸った。「じゃあ、どうすればいい?」
「まず、自己評価の基準を見つけること」日和が提案した。
「自己評価の基準?」
「自分が大切にしている価値観。正直さ、創造性、思いやり、など」
空が加えた。「その基準に照らして、自分を評価する」
「他人が何と言おうと、自分の基準では良いと思えるなら、それでいい」
ミラが考えた。「私の基準...何だろう」
日和が静かに言った。「それを探す旅が、自己理解」
「心理学では、自己受容が重要とされています」空が説明した。
「自己受容?」
「完璧じゃない自分を認めること。長所も短所も含めて」
ミラが聞いた。「でも、批判を全部無視していいの?」
「いいえ」日和が答えた。「建設的な批判は受け入れる。でも、それで自己価値を否定しない」
空がまとめた。「行動と人格を分ける。『この行動は改善できる』と考えても、『私はダメな人間だ』とは考えない」
「行動と人格の分離」日和が頷いた。
ミラが少し明るくなった。「つまり、批判は学びの機会で、自己否定の理由ではない?」
「その通り」空が認めた。
日和が聞いた。「さっきの投稿、ミラさん自身はどう思う?完璧じゃないかもしれないけど、伝えたいことは伝わってる?」
ミラが考えた。「うん。言いたいことは、ちゃんと書けてた」
「じゃあ、それでいいんじゃない?」
ミラが微笑んだ。「そっか」
空が言った。「他人の意見は参考にする。でも、最終的な判断は自分でする」
「自己決定」日和が加えた。「自分の人生の主人公は、自分」
ミラがスマホを閉じた。「少し、楽になった」
「他人の言葉に揺さぶられるのは自然」空が言った。「でも、揺さぶられっぱなしにならない」
「自分の軸を持つこと」日和がまとめた。
ミラが聞いた。「軸って、どうやって作るの?」
「時間をかけて」日和が優しく答えた。「自分と向き合い、価値観を明確にしていく」
空が補足した。「そして、小さな成功体験を積み重ねる。それが自信になる」
三人は静かに座っていた。図書館に穏やかな沈黙が流れる。
「他人の評価も大事。でも、それだけじゃない」ミラが呟いた。
「そう」日和が微笑んだ。「自分の声も、ちゃんと聞いてあげて」
ミラがノートを開いた。今日から、自分の基準を探す旅が始まる。